焦がれる吐息




なんて願っていても、綺麗にいかないのが現実。簡単なように思えて、子供の心ってとても難しくて、思った以上にシビアだった。


「え〜あのゴリラが〜?」

「あのオカマ、偽善者じゃ〜ん!おれきらい〜」

「おれもあの偽善者やだあ〜話し方へんだし」


生意気な口を叩く先頭に立つのは、小学生の男の子達。ネットに書かれたケンちゃんの悪口を自分のものにしているようだった。

実際に極一部で、三輪社長が児童養護施設を再建したニュースに対して、『イベント気分でやっただけだろ、事務所アピール、偽善だ』と酷い事を言う人もいた。

褒められる事しかしていないのに、どうしてこうも捻くれた捉え方ができるのか。


それでもケンちゃんは「救えたのだからいいのよ、結果オーライ」なんて。どこまでも人が良いから、代わりに私が腹を立てている。

だってケンちゃん、施設の由来を教えてくれたとき、本当に嬉しそうにしていたのに。

子供達にまで酷い言われよう、あんまりだ。

私はケンちゃんのように心が広くないから、迸る悲しみと虚しさで、気を抜けば涙が突き上げてきてしまいそうなのに。


「こら、そんな風に言わないって言ったでしょ」



でも、割と本気で顔を顰めて怒ってみても、「スミちゃんプンプンしてる〜」「きゃ〜逃げろ〜」とふざけた鬼ごっこが始まってしまって全然伝わらない。相変わらずクソガキめ、なんて毎度、心は荒んでいる。

子供って純粋だからこそ、残酷だ。

本人が聞いたら落ち込むどころじゃない、オイオイ泣きながら布団にくるまって何日も塞ぎ込んでしまうかもしれない。

とても、繊細な人なんだから。

駆け回る生意気な小学生組をムスッと仁王立ちしながら眺めていれば、チョンチョンッと服の袖を引っ張られる。

視線を落とせば幼児組の女の子二人が、キラキラ輝く瞳で私を見上げていた。思わず表情を緩め、目線を合わせるようにしゃがみ込む。


「……どうしたの?」

「スミちゃんとあっちであそびたい〜」

「いっしょにシールはりたいのぉ」

一人は私が買ってきた袋を掲げながら、もう一人にはクイクイと服を引っ張られて、思わず笑みがこぼれた。

頷きながら、それぞれと手を繋ぐ。

幼児組、かわいい……。

ぎゅうっと握ってくれる力に、自然と心も凪いでいく。いつも気づいたら頬は蕩けていた。


右手には、ユイちゃん。左手は、サヤちゃん。


「あれ、ケイトは?」


そして、毎度お決まりのこのフォーメーションにはもう一人。いつも必ず、私の服の袖をきゅっと掴んで静かに引っ付いてくる男の子がいるのに。

仲良し三人組のその一人がいないことに気がついて、きょろきょろと見渡せばユイちゃんが園庭のすみっこを指差した。