焦がれる吐息





「あー!スミちゃんだ!!!」

「みんなあ〜!スミちゃんきたよお〜!」

「やったあ〜スミねえーちゃーん!!」




「……分かったから、静かに」



園庭から駆け寄ってきた子供達に、あっという間に包囲されて苦い笑みを頬に浮かべた。その中の一人、右腕に引っ付いてきた女の子に、「ケンジから」と、さっき買ったばかりの袋を渡した。



「なあにー?あ、シール!!すごい、いっぱい!かわいい〜!」

「いろんなシールほしいって、スミちゃん覚えててくれたの〜?」

「わあ〜、スミちゃんありがとお〜」



「違う、ケンジから」


きゃっきゃと、盛り上がる子供たちにもう一度、強く、はっきりと訂正した。


———生憎、私は、見知らぬ子供達の為に何かしてあげたい、などと言った慈愛に満ちた心は持ち合わせていないし、そんな綺麗な事を思ったこともない。

寧ろ、子供は大の苦手だし、子供の世話をするくらいなら昼過ぎまで寝ていたいと思うような薄情な奴だ。



そんな私だけれども、もうここには十指に余るほどに訪れている。


きっかけは、ただ一つだった。



『……ねえ、スミちゃん…アタシね、子ども達に怖がられてるみたいなの』


心が張り裂けてしまいそうな、ムカつく空笑い。


『でも仕方ないのよね?アタシ、見た目と心がチグハグだから……受け入れられないのは、当たり前よね』


ふと、抱える闇をこぼすように呟いたケンちゃん。それは、いつも通り肩を並べて酒を飲んでいたときだった。

欠けた月を見上げるその横顔は、切り傷に冷たい風が触れたような、痛くて、哀しくて、切なげだった。


そんな顔をされたら、居ても立っても居られなくて。



『アタシね、子供が産めない分、誰かの子供を笑顔にするわ!そしていつか、世界中の子供達をハッピーにさせることが夢よ!!』


いつの日だったか。

悔し涙が幾重にも染みた学ランを着て、拳を突き上げた後ろ姿を懐かしく脳裏に咲かせていたら、自然とここに足を踏み入れていた。



どうか、誰よりも美しく澄んだ心の持ち主を、子供たちに分かってもらえるように。

どうか、好いてもらえるように。

みんなから、愛してもらえるように。


私は密やかに〝ケンちゃん好感度アップ作戦〟を始めていたのだ。


勿論、ケンちゃんには秘密で。


知ったらどうせ、泣いてしまうだろうから。ケンちゃんに涙も、悲しい顔も似合わない。


ずっと豪快に笑って、ふざけててほしい。