焦がれる吐息




「……了解です。澄香さんの帰り、待ってます」


笑っているような、嬉しさ滲む声がさらに頬を熱くする。自分の足元、グレーの玄関マットに全集中しながら、そのままぐるんと回れ右をした。


「じゃあ…」


そのまま、スニーカーに乱暴に足を突っ込んで、そそくさと外へと飛び出そうとした、のに。

「あ、」と思い出したような声と同時に、くん、と袖が引っ張られる。

彼に引き止められたのは、これで三回目。相変わらず肘のところ、百瀬くんらしい柔い力だった。

恐る恐る振り向いた先には、玄関の段差で更に高い位置に美しい顔がある。

百瀬くんは桜色の唇を艶やかに弓なりにして。


「言い忘れてました」

「……な、んですか」

「薬も、置き手紙も、さっきの言葉も、今も。澄香さんから貰えるもの全部、めちゃくちゃ嬉しいです」

「え、」

「澄香さんがあまりにも可愛いんで、俺も言いそびれるところでした」

「へ、」

「買い物楽しみにしてます、いってらっしゃい」

「……い、いってきます…?」




カチャン…———と背で閉じたドアの音を合図に、ずるずると座り込んだ。


たぶん、私の心臓は破裂したかもしれない。

だって今、鼓動の音すらも聞こえなくなってしまうくらいに衝撃を受けている。



「……かわいい…?」


ぽつりと振り返ってみて、ぼぼぼっと、遅れて身体中の熱が沸騰する。ばっと両手で顔を覆い蹲ったまま、暫く動けなかった。