暫く、時計の針だけが動いてた。
「……それ本気で言ってる?」
漸く出せた声は、思った以上に冷たかった。
馴染み深い三白眼を睨みつけるようにして見つめても、ちっとも真意がわからない。
「もちろん本気よ。大切なスミちゃんに、冗談でこんなこと言わないわ」
「………」
「彼ね、女性とは碌に会話もできないのよ。事務所の女は全員アウト。嫌悪感を抱いてるわけではないみたいなんだけどね、どうしてなのか、アタシも詳しくは聞けてなくて」
困ったように細い眉をしゅんと下げるケンちゃんは「だからスミちゃんと一緒に過ごして、少しでも心を解してほしいのよ」と。
大真面目に言ってくるから、胸がきゅっと抓まれるような痛みを感じて、それからむかっとする。
幼い頃から、忙しい母親に代わってケンちゃんが私の面倒を見てくれていた。
ケンちゃんが"大切"と言ってくれたように、私にとってもケンちゃんは大切な家族であり、互いのすべてを知り尽くす親友のようで、姉妹のような関係。
だからこそ、腹が立つ。だって、そもそも。
「私が"死ぬほど男嫌い"なの、忘れたの」
ケンちゃんが、一番知ってるはずなのに。
私のほうこそ、男と会話するどころか近づきたくもない。だから、彼女のまねごとなんて無理に決まってる。



