焦がれる吐息





「澄香さんの好きな物とか苦手なもの、分からないんで。一緒に行って教えてください。」


途端に、思考がどこかに置いてけぼりになった。

言葉も忘れて固まる私に、緩やかに目尻を下げた百瀬くん。柔く、優しげな顔をして、


「……っていうのは、口実で。ただ単にもっと澄香さんと同じ時間を過ごしたいなって、本当は今日誘おうと思ってたんです」


ぴょんと寝癖のついた金の髪をぽりぽり掻きながら、どこか恥ずかしそうにする。

そんな彼を瞳に、心臓と気管がぎゅうっと、もの凄く締め付けられる圧迫感に襲われた。


自身の前髪にくしゃりと手を差し込んで、頭を抱えるように俯く。圧迫感から逃れるために、ひとつ、苦しい息を深く吐いた。

百瀬くんの心は、やっぱり読めない。

まだ一つも解けない。でも、


「……昼、までには…」


震えかけた唇を、一度、ぎゅっと噛み締める。

そして、大きな一歩を踏み出すように、再びそっと小さく開いた。


「……昼前には、帰ってくるので…午後は空いてます……支払いは、折半で。」



たったさっき、絶対に有り得ないと思っていたことが呆気なく覆る。やっぱり、クラクラと目眩がしそうなほど息苦しい。今すぐ逃げ出したいくらい、恥ずかしい。



それでも、思ったほど、悪い気はしなかった。