焦がれる吐息





「……ごめん、なさい」


微妙な空気に、情けない自分の声がこぼれ落ちた。眉尻を垂らす私に、百瀬くんも困った顔になる。


「いや、澄香さんは謝らなくても、」

「いえ、凄く失礼でした……あの、私、」



荒れた拳を視界の隅に、胸が潰れそうになる。




「……男の人の気持ちなんて考えた事もなくて…考えようと思ったこともなくて…」



自分でも、何を言いたいのか分からなかった。

ただ、男が嫌いとか今はそんなの関係なく、百瀬くんの繊細な心を傷つけてしまったんだと思うと、唇が辿々しく動いてゆく。


「……それ以前に、男の人と碌に話したこともないんです。だからって、デリカシーに欠けた今の言い方、凄く失礼でした……ごめんなさい」


目を丸くして固まる百瀬くんから、ずるずる視線が落ちる。男の気持ちを汲み取ろうとするのなんて、初めてで。なんて言葉にしたらいいのか、難しい。

自分の足元を見つめて、考えて。

そうして、くちびるを大切に、慎重に動かした。


「……家賃ですけど……その代わりに、あの、たまにでいいのでまた何か作ってください」


なんだか恥ずかしいことを口にしている気もするけれど。でも、もうここまできたらと勢い任せだった。


「サンドイッチも、ホントに美味しかったです……それも、言いそびれてました。」


出来るだけちいさく、トーンを下げて言っているのにじわっと耳朶に熱を感じる。バクバクと、心臓がまもなく破裂しそうだった。

また終始無言な彼の反応が気になって、チラリと見上げてみた先、揺れる繊細な瞳とまじわった。

徐々に、その蒼い瞳が湿り気を帯びていくように見えるのは私の気のせいか。

百瀬くんはこくりと一度、喉仏を動かして。

ゆっくりと、片手で頸を抱え込むようにして俯いてしまった。



「……狡すぎますって…」



とても小さく震えたような声が、雫のようにこぼれ落ちる。

なんて言ったのか、私はそれを上手に掬うことが出来なくて首を傾げた。

すると、百瀬くんは顔を上げて、これまでの力を抜くようにふっと柔く笑みを零した。


「じゃあ、次は一緒に買い物行きませんか?」

「……え?」