凛々しい声が、胸を突く。一点の曇りもない、奇麗な眼差しの先で、私はただ困惑することしかできなかった。
「寧ろ払うのは俺の方です。光熱費とか家賃とか、世話になってる分払います」
「…いや、それは別に良いんですけど…ケンジが、」
「伝えてもらえませんか?」
「え…?」
「断った筈なんですけど、伝わってないみたいなんで」
私の言葉をぶった斬る百瀬くんは、気のせいか、少し苛立っているようにも見えた。
それを証するように、挑むような薄笑いをゆったりと頬に浮かべ、
「“金なんて糞ほどどうでもいい” って」
美麗な瞳の底に、めらっと、静かな焔を灯す。その言葉は、何か深い意味を重く含んでいるように冷たく響いた。
「俺が求めてるのは、……欲しいのは、」
彼は、揺れる瞳に私を閉じ込めたまま、静かに言葉を並べる。
でも何かの寸前で、きゅ、とくちびるを結んで止めてしまった。まるで言葉を咄嗟に呑み込んだようだった。
視界の隅で、骨張った拳が強く握り締められているのを捉える。
再び寄せられた眉が、伝えきれないもどかしさを示しているようで。私まで歯痒い気持ちになってしまう、そんな切なげな表情をしていた。
そして、感情を隠すかのように、百瀬くんの長い睫毛は伏せられてしまう。
逸された美しい瞳に、どうしてか私の胸がぎゅりっと抓られたように痛くなった。
「兎に角、自分で稼いだ金があるんでいいです」
———はっと、した。
静かに吐き出された言葉で、私は、漸く気づく。
簡単に、現金を渡しましょうか、なんて。
毎日一生懸命に働く彼にぽんっと金を投げ出すようなことを言うなんて、凄く、失礼だ。
私はいま、彼のプライドを傷つけてしまったんだ。



