身長168センチと、高身長女子の私でも見上げるほど高い位置にある小さな顔。
間近で見下ろされても威圧的に感じないのは、きっと、百瀬くんの纏う雰囲気が柔らかだから。
そして、他の男だったら絶対に怖いと感じてしまう距離感なのに、不思議とそれも感じなかった。
その代わり、心拍数が急上昇する。
「まあ…」とつまらない返事をしながら、美々しい瞳から視線を落とした。
やっぱり気まずくて、何かを言われる前に「そういえば」と頭をフル回転させる。
「ケンジから生活費預かってます。言いそびれてて、すみません」
ケンちゃんは『一緒に買い物を』なんて言っていたけれど、私と百瀬くんが二人で出かけるなんて絶対に有り得ない。
想像しただけでもクラクラ目眩がするほど息苦しいし、何より百瀬くんだって嫌だと思う。
けれどもちゃんと、預かったお金は渡さなければならない。
どうしてケンちゃんが、百瀬くんの生活費まで負担するのかは知らなかった。でも、野心家で、それでいて慈悲深いケンちゃんのことだ。
きっと、彼が“立派な芸能人”になるまで面倒を見る気なのだろう。今までも、三輪社長は芽の出ないモデルや歌手を甲斐甲斐しく世話焼いていたから。
「現金で渡したほうがいいですか?それとも、」
「いいです」
突然の、強く尖った声に心臓が飛び跳ねた。
驚き見上げれば、芯の強い瞳をした百瀬くんが、眉をぐっと寄せて私を射抜く。
まっすぐでいて、まるで野望を秘めたような瞳に、喉が締め付けられるように痛くなった。
「金とか、そういうんじゃないんで。俺が今ここにいる理由。」



