熟れない自分の言葉を前にして、頭の中が発熱したようになった。
彼は瞬きも忘れたように大きく目を張る。
美しい瞳の中、そして、その指先から昇る紫煙だけが、ゆらりゆらりと揺蕩う。
それを見つめる私は、目蓋を閉じてしまいたくなるのを堪えて。鼓動、熱、彼、すべての事柄に抗うように唇をむっとひん曲げた。
百瀬くんが一体どういうつもりで紡いだのかは想像もつかないけれど。
“考えててほしい”なんて、“意識してください”だなんて、随分勝手なことを言う。
そんなの、もうさせてるくせに。
仕事を抜け出してわざわざ料理を作ってくれて、私のメモに丁寧に返事を残してくれて。
たったそれだけ、まだ彼の何も知らない。それでも律儀な優しさを向けられた私は、男性経験のない思考を一杯一杯にするには十分だった。
ジムに行ってる時も、お風呂に入るときも、お酒を呑んでるときも、眠る前も。ふと気づいたときには、百瀬くんのことを考えてしまってる。
本当に、鬱陶しいくらいに、気を抜いたらすぐに百瀬くんがぽわんと頭に浮かんできてしまうのだ。
考えない方法があるのなら、誰か教えてほしい。
「………」
「………」
息苦しいほどに動かない空気に頗る居心地が悪くなって、又可愛げもなくフイッと顔を背けて逃げだした。
百瀬くんは終始、美しい人形のように固まっていた。何でもいいからリアクションの一つでもしてほしかった、なんて。余計に自分で自分が恥ずかしくなった。
ぱたぱたと部屋へ駆け込んで、キッチンの影に隠れるようにして蹲る。
「(……何てことを、言ってしまったんだ…)」
抱え込んだ膝にぐりぐりおでこを押しつけて、そうして、後悔と惑うため息を零した。
𓂃◌𓈒𓐍
「———狡すぎでしょ、」
澄み上がる美しい空、眩い光の下でも
同時に、また一つため息が積もっていた。
「……心臓、きっつ…」
𓂃𓈒𓏸



