焦がれる吐息




基本、朝は連続で二本吸うのがお決まり。

いつもだったらまたすぐに火をつけるところだけど、もう部屋に戻ろうか、どうしようか。

密かにもじもじと悩む私の気なんて知らない彼は、「そういえば、」と静かに口を開いた。


「部屋、模様替えしたんですか?」
 
「……あーあれはケンジに勝手に変えられて。元に戻しただけです」


百瀬くんの言葉で脳裏に浮かぶのは、一昨日、大掃除をしたときのこと。

やっぱり女の子らしい部屋がどうしても落ち着かなくて、ソファーのぬいぐるみとガラステーブルの一輪挿し以外はすべて片付けた。可愛さのかけらもない、質素な部屋に元通り。

でも、元に戻したのにソワソワする心は落ち着いてくれなかった。たぶん、百瀬くんのせいだ。五日間、どうしてかずっと頭から離れてくれなかった百瀬くんのせい。

そう、心の中で勝手にくちびるを尖らせる私を、また急な沈黙が襲う。

不思議に思いながら横を見上げれば、やっぱり思った以上にすぐ近くにある美しい横顔。

それに強い拍動を感じながら、黙り込む百瀬くんにまた首を傾げる。


「…さっきから、どうしたんですか」


五日振りの彼は、眩しくて、そして変だ。

百瀬くんは遠くのなにかを見つめたまま、一度ゆっくりと紫煙を燻らせる。そうして、なんて事ないようにゆったりと言葉を紡ぐ。


「いや、ただケンジさんが羨ましいなって」

「……うらやましい…?」

「今はまだ、分からなくていいです」


深みある言葉を静かに零した彼は、青い瞳をそっと寄越した。瞳と瞳が重なったとき、彼は蠱惑的に柔く笑む。


「でもそうやって、俺のことを考えててほしいです。たくさん考えて、俺を意識してください」

「え?」

「そのうち、ちゃんと伝えるんで」


きゅん、と、訳もわからず心でくるしい音が鳴った。

ほんとうに、百瀬くんはどうしたのだろうか。

私を映す美しい瞳が、なぜか甘みを含んでいるようにみえて。五日前よりも、焦げるような熱を感じてしまう。