「……てか、ケンジさんと仲良いんですね」
いまいち状況が掴めない私をよそに、百瀬くんはそう言いながら、顔を隠していた手で前髪を掻き上げる。
まっさらなおでこ、整った眉、隠れていたものが露わになっただけで、馬鹿みたいにドギマギした。
一瞬の仕草さえも、狡いくらいに婀娜っぽい。やっぱり百瀬くんは年下に見えない。
だから、彼がギリギリ未成年だということも忘れて。煙草を手にしていることも、違和感なく受け入れてしまっていた。
「まあ、小さい頃からずっと一緒にいるので」
そう答えている間に、彼が隣に並ぶ。
朝の洗練された匂い、燻る煙草の香り、それに混じって、柔軟剤のような香りが微かに分かる距離。
肩と肩が、あと少しで触れてしまいそうな距離だった。
予想以上に近くにきた彼に、緊張がドッと押し寄せてくる。
「………ふうん」
話題を振ってきたのは百瀬くんなのに、少し間を置いて返ってきたのはつまらなそうな声だった。
そのまま彼はマイペースに桜色のくちびるに煙草を挟み、片手を翳しながら揺らめく火を灯す。
そのとき、手の甲が見えた。
五日前よりもだいぶ赤みがひいているのが分かって、確かに心が弾む。
もしかして、薬を使ってくれたのだろうか。
嬉しい、良かった……なんて。
そんならしくない感情が心に芽生える。なんだか照れ臭くて、でも胸の内が温かくなるような感覚だった。
彼は遠くを見つめながら、静かに煙を吐いた。
光で艶めく、色素の薄い睫毛。
まばゆいほど美しい、つややかな白い肌。
朝日に照らされたその横顔は酷く眩しく。彼のどこもかしこもキラキラと透き通って見えて、幻想的だなんて変な事を思ってしまった。
煙草を吸うって、こんなにも綺麗な光景だったのか。危うく惚けてしまいそうになるところを、手元の落ちそうな灰で我にかえる。
短くなった煙草を何食わぬ顔して灰皿に押し付けながら、胸の内はドキドキして仕方なかった。



