なにその質問?と首を傾げながら、もう煙草を咥えかけていたので答える前に取り敢えず一吸い。
ケンちゃんは煙草を吸わないけれど、偶に二人でベランダでお酒を呑むことがある。
夜風を感じながらアルコールに浸る、その現実とあやふやになる時間が好きだった。
ケンちゃんはあやふやどころか、すっかり現実を手放して酩酊することが多いけれど。「スミちゃんにお月様をとってあげるわね〜ん」と何度手摺から身を乗り出して、その度に説教したことか。
ふう、と私がゆっくり煙を吐くのと一緒に、彼がそっと見上げてくる。
何かを訴えるような上目遣い。
射抜くような強い眼差しの底に、私の影が映る。
急にどうしたのだろうか。
たった今、とろんと眠そうにしていたのに。余りにも真剣な眼差しに戸惑いを覚え、益々はてなが宙に飛ぶ。
「……ケンジのですけど??」
「………」
「え、なに、変なこと言いました?」
どうしてかフリーズしていた百瀬くんは、今度は勢いよく片手で顔を覆いその場にしゃがみ込む。
俯いてしまって、その表情は見えない。
そうして、「はあ…」と深い溜め息が聞こえてきた。
「……焦った、」
「?…今なんて…??」
「……いや、なんもないです」
ぼそっと呟く百瀬くんへ、穏やかな白い光が降り注いでいる。
透き通るような輝く金の髪から覗いた耳のてっぺんが、ほんのり赤く色づいて見えた。まるで恥ずかしがっているみたいだ。



