焦がれる吐息




朝の光が差し込む彼の瞳は、目が冴えてしまうほどにキラキラ煌めいて神秘的だった。

瞳孔から虹彩にかけて花ひらくように、わずかに黄の色味が帯びているのを新たにみつける。

今日はまるで、美しい地球のような瞳に見えた。



「……どうぞ…?」


内心狼狽えて、平静を装うとすれば謎に疑問符がついてしまった。

居ないとばかり思っていたから、心の準備ができていない。鼓動はうるさくなるどころか、驚きで止まりかけている。



私の返事に百瀬くんは嬉しさを隠すようにくちびるをふにっと結び、ゆったりと腰を折る。

地面へと静かに落ちるその手には、踵がない洒落た黒色のスリッポンが握られていた。

わざわざ玄関から持ってきたのか。

出る気満々じゃん…なんて、なんだかほんのちょっぴり彼がかわいく見えてしまう。

気づいたら自分の口角が緩みかけていて、慌てて誤魔化すように煙草を口元に近づけた。


そんな私をよそに、百瀬くんの動きはピタリと止まる。

靴を置きかけた、中途半端の体勢だ。


「……澄香さん」


寝起きの、少し掠れた色っぽい声。

呼ばれただけなのに、鼓動がすぐさまトクンっと跳ね上がる。


「これ、誰のですか」



感情の読み取れない声の先には、紺色のスポーツサンダルがあった。明らかにメンズサイズのそれは、ケンちゃんのだ。百瀬くんは何故かそれを、じっと見つめている。