焦がれる吐息





冷蔵庫、必然的に百瀬くんに静かに近づけば、「言ってくれれば、取りますよ」なんて、彼は簡単に微笑んでくる。


その手は、ジューッと音を鳴らすフライパンの中、お肉をひっくり返しているところだった。

黒色のトレーナーを捲って露わになるその腕は、筋がでていて意外にも逞しく、男らしさを感じてしまう。

そこから流れるように、ふと、私の目が留まる。

綺麗に菜箸を扱う、すらりとした人差し指と中指。そこには、絆創膏が貼られていた。

真っ白な手の甲も、荒れているのか、赤切れのように所々つよく赤みを帯びている。

勝手に、どこもかしこも創りもののように美しい人なのだと思ってた。

でも、その人間味溢れる手を目にして。

何故かきゅんっと、胸の内で変な音が鳴る。

心なしか、また熱もあがったような気がした。


「……作ってもらってるだけでも、悪いので」


急いで冷蔵庫を開けて、不可思議な熱をこっそり冷ます。さっきからもうずっと、この熱はなかなか落ち着いてくれない。


冷蔵庫を漁るふりをしてほんの少し冷気に頼っていれば、「澄香さん」と冷蔵庫のドアを隔てて声をかけられた。


……なんだろう、と、パタンと冷蔵庫を閉めてみた先、すぐそこに百瀬くんがいて思わず目を見開く。


「味見、してくれません?」


その手には、ティースプーンが握られていた。

百瀬くんの得意技なのだろうか。

また、ふわりと色気を振り撒くように僅かに首を傾けた彼は、スプーンを私のくちびるにそっと近づける。