焦がれる吐息




なにを、言ってるの……


心臓の痛みに抗うように、眉をぎゅっと寄せて。

訝しげに視線をあげてみて、やっぱり後悔した。

私と瞳が絡んだその瞬間、百瀬くんは垂れ目を柔く細め、優しげな瞳を降り注ぐ。

その瞳が妙に擽ったくて、耐えきれずにパッと背を向けた。

ついさっき、自意識過剰な考えを浮かべていた自分がなんだか恥ずかしくなった。

百瀬くんを、私が嫌う男と同じ括りにしていいのか、自分の中で問いが芽生えはじめる。


まだ冷たさが残る缶ビールを強く握り締めた。




「……できれば……お酒に合う、おつまみで」




くちびるを開く前からも、閉じたあとも、鼓動がうるさくてたまらなかった。

小さくぶっきらぼうに放った言葉が、また一瞬の沈黙をうむ。

ほんの少し背後が気になったけれど、でももう頬も耳も熱すぎて振り向けなかった。

どくどくと、鼓動の狭間で、カサッとマウンテンパーカーの擦れる音がする。


「了解です」


徐に返ってきた見えない声は、嬉しそうに微笑んでいるように聞こえた。

それに、ここぞとばかりにまた心が擽ぐられる。


「髪、乾かしてきます」


早口で言い捨てて、ぱたぱたと洗面所に逃げ込んだ私は、いつもの倍以上時間をかけてのろのろと髪を乾かした。