焦がれる吐息





私はドラマか映画、将又、夢の世界にでも落っこちてしまったのだろうか。

只々驚き、心奪われるようにしてポカンと固まってしまえば彼女は更に傘の柄を近づけて。


「同じ店の、常連の誼みってことで。」


潤う薔薇色の唇をふっと柔らかに緩め、愛らしく首を傾ける。


瞬間的に「ゔ」と声にならない変な声を上げてしまったような気がする。

えげつない色気と目を瞑りたくなるほどの凛としたかっこよさ。

そして異様な可愛さと清らかな美しさも纏めて一気に襲いかかってきて脳がキャパオーバーとなり思考停止しているうちに、気がつけば彼女から傘を受け取っていた。


「ややや、でも、あの、」

「危ないから夜道はお気をつけて。じゃ」

「(…………………いやいやいやいや貴女のほうこそぉ!)」


漸く心の中で突っ込めた時にはもう、彼女はさっさと背を向けて行ってしまう。


ばくばくと心臓が飛び跳ねて、冷たかったはずの頬が熱くてたまらない。

驚くほど早歩きの彼女に、せめてお礼の言葉をと小走りで追いかけようとして。


さっ、と真横を誰かがものすごい速さで追い抜いた。

きらきら、目の前で金の髪が輝きを放ちながら白い粒を纏う。



「———澄香さん…!」