焦がれる吐息





「———降ってたの、雪だったんだ」


美女が去って直ぐに、私達も店を出た。

結局ずっと無言だった友人は、空を見上げて漸く呟く。

倣って見上げた先、澄み渡る濃紺の空から、白い粒がはらはら舞い落ちる。


「今日は直ぐ帰れば?」

「………そうする」


手を突っ込んだダウンのポケットの中で、電子タバコをぎゅうと握り締めた。

店前で友人と解散して、ゴミ捨て場…ではなく、とぼとぼと大通りへ向かう。

通らなければ帰れない並木道は、自分の心とは正反対にイルミネーションで光溢れる。

加えて粉雪の白さと冷たさのせいで、目頭が痛いくらいに眩しい。

頭に#謎の超絶美男美女カップル爆誕がこびりついて離れない。

当時それが流れてきた時、詳細が書かれていたコメントは直ぐに消去されてしまったけれど私は運良く読んでしまった。

謎の一般人の美青年が、美女に公開告白したと。

涙を浮かべながら見つめ合う二人はまるで映画のワンシーンのようで、最後には美青年が美女を攫っていくようにして去ったと書かれていた。



「………はあ…」


濡れたアスファルトを見つめ、思わず吐いた重い溜め息でさえ真っ白だった。

消化不良だ。まだ、何もできていないのに、唐突に恋を失って気持ちの行き場がない。

はらはら、ブーツの先に溶けて水の粒になっていく光景をぼおっと見つめ続けていれば、不意にそれが途絶えた。

同時に後ろで気配がして慌てて振り向いた瞬間、「!!!!!」と眼球も心臓も飛び出そうになる。



「女性が一人で危ないですよ」

「え、え、え…?」

「これ良かったら。私はすぐタクシー乗るから」

「あ、え、」


唖然とする私を映す妖艶な下三白眼は、きらきらと光り濡れ輝く。

どうしてか今、私にビニール傘を傾けてくれているのは頭の中にいた例の美女だった。イルミネーションの彩りと粉雪を背景に、彼女は眼も眩むほどの美しさを更に纏う。