その場にいた全員が、自然と振り向いた。
そして、息を呑んだのもほぼ皆同じ。
「………………やっばい、美女」
隣の友人だけが、ぽつん、と小さく溢す。
それは私に言ったというよりも、心からフイと出てきた言葉が思わず声になったという様子だった。
それに私もコクコクコクとつい高速小刻みで頷いて。
失礼承知で、釘付けになってしまう。
美しい、という言葉が真っ先に浮かんだ、二人目の人だった。
上質な黒色ロングコートに映える、粉雪のような白い肌と外の寒さからほんのり色づく淡紅の頬。
透明感あるネイビーの艶髪はふわふわ綺麗に巻かれ。
前髪かきあげスタイルで丸くなめらかな額を露わに、くっきり二重の涼しげな下三白眼からアンニュイな色気が溢れ出る。
その美しい眼差しは、私達の頭上を越して板長に向けられていた。
つられるように板長を見れば、毅然とした姿しか見たことがなかった厳格な顔が、直ぐに嬉しそうな笑みで溢れる。
「今日はいらっしゃると思っていたので、いつものところ空けてあります。さあ、寒かったでしょう」
板長が促したのは一番端、何となく気になっていた、ずっと空いていた席。
彼女はクールな表情のままに、軽く会釈だけを返し席へと向かう。
その一瞬、ふわりとほのかに舞う、香水ではない彼女自身の柔らかな香りとか。
コツコツコツと静かにヒールを鳴らして歩く背筋の伸びた姿勢とか、コートを脱いで露わになるハイネックのニットを着た身体の曲線も。
隅から隅まで気品があり美しくしなやかで、漆のスプーンも釘付けになった視線もずっと動かせない。



