彼が、私の格好をどうこう思うわけない。
自意識過剰だと分かっている。
でも、どうしても、男性の前で露出することが苦手だった。
他人から性的な目を向けられるのを、異常に不快に感じて。自分の性を曝け出すのが、怖い。
家主は私で、スタイルを変える必要はないし、いちいち気を遣うのは性に合わない。
そう、強気でありたいのに、記憶が瓶の栓を抜いたように身勝手に溢れ出てくる。
———焼け爛れた真っ赤な夕焼け空の下、陽炎のようにきらめくナイフ。
全身を舐め回すようなねっとりとした眼差し、興奮を抑えるような荒い吐息、そして、
『ずっとこの時を待ってたんだよ、俺の澄香』
まるで歓喜に満ちて震える、忌々しい声。
奥底に無理やり封じ込めた闇色のトラウマは、ふとした時いつだって簡単に鋭く蘇って。
何年経っても、私の心を飽きずに切り裂く。
気づけば、キャミに伸びていた指先は震えていた。滑稽で、情けなくて、絶対に誰にも見られたくない自分だ。
震えを誤魔化すように夢中で引き出しを漁った。一度しか着たことがない黒の上下スウェットを見つけて、荒々しく引っ掴む。
分厚い布地が、まるで心の鎧のようだった。
ぎゅうっとそれを抱き締めるようにして、静かにうずくまった。
——— ほんとうは、変わりたい。治せるものなら、治したい。出来ることなら私も、過去のぜんぶ、覆してやりたい。



