雷に打たれた。
いや星ひとつない黒く澄み渡った夜空の下で打たれるわけがないのだけど、本当に打たれたのかと思うくらいに、電撃のような感覚が身体を走った。
だって———
『……いや、声、ねむそうだなって』
艶気を含んだ静かな声。街灯の白い光の下、金の髪は煌めき、宝石のように輝く青い瞳は遠い夜空を仰ぐ。
たった今いた店の板長と同じ白衣を纏ったそのスタイルは、出逢ったことのない異次元の頭身。
長い首、小さな頭、鼻梁は高く真直ぐに上品に伸びている。
男の人を見て、真っ先に美しいという言葉が浮かんだのは初めてだった。
辟易してきたマッチングアプリに出てきたら詐欺だと疑うくらいには人間味がなく、芸能人とはまた違う浮世離れした存在。
華がある、というよりも、儚げでいて。そして恐らく年下であろうけど、どうしてか、異様に色っぽく見えてしまう妖艶な青年が確かに目の前にいる。
数メートル先の彼は電話中なのか、スマホを耳にこちらには気がつかない。
我を忘れてその姿に息を呑み、ただ見惚れ、立ち竦んでいれば。
そのうち青年は、長い睫毛までをも煌めかせながら伏し目がちに、落ち着かない片手は頸をかく。
『……かわい』
ふわりと目尻を緩め、白い吐息とともにたった三文字をつい漏れ出たように呟く。
瞬間、ギュン!だか、ギャン!だか、ギュイン!だか。
兎に角、心臓が力一杯に鷲掴みにされた。
いやいや、君こそ「かわい」。
なんだこの子、美しいとかっこいいと「かわい」が素晴らしく仲良く手を繋ぎ完璧に共存していらっしゃる。
『………何でもないです。後で直接言います』
———はいはい、初めから、分かっていますとも。
『………いや、先寝ててください。きっと、起こしちゃうと思うけど』
———その電話の向こうに大切な人がいることは。
それでも、相手が見ていないのに、見えていないのに、まるでとても愛おしむように目を細め、優しい声を静かに紡ぐ彼に恋をしてしまった。
誰も知らない夜の路地裏で、私しか知らないその時を見つめ、この出逢いが運命であってほしいと燻らせ忘れたタバコ片手に祈ってしまったのだ。



