焦がれる吐息





「………とことん、狡い人」

掠れた声でやっと呟く、今にも泣き出しそうな美しい顔を見れたのは一瞬だった。

次の瞬間には、流れるように後ろに押し倒される。

けれど痛みや衝撃はなかった。

雲の上に着地するように、やさしく。後頭部が大きな手のひらに守られ支えられながら、二人して倒れ込む。


再び、柔い唇に塞がれて。


「ふ、あっ、まっ、」


同時にダウンのその下、ニットの裾から冷たくもしなやかな指先が差し込まれる。腰をそっと撫でられ、身体が大袈裟に跳ねる。


「…、んっ、」


これ以上はまずいと、柔らかな玄関マットの感覚が頭のどこかで羞恥心を煽るのに。こんな所で我を失ったように求めてくるらしくない彼に、不覚にもいつも以上に感じて、熱く震えてしまう。


ふと、彼は態とらしい艶音を奏でながらゆったりと離れていく。その色艶にまみれた唇を朦朧と追っていれば。



「いま、酔っ払ってるんですよね」


薄闇の中、見下ろされた直ぐそこで、妖艶に浮き輝く青に捕まる。私に覆い被さる彼は、どこか自嘲的な笑みを艶やかに浮かべた。


「じゃあ、今からの記憶は失くしてください」


官能的な指先が、さらりと私の頬を撫でる。


「今日は流石に身勝手になるから」


簡潔的にそれだけを告げた彼は、お揃いの厚みを剥ぎ取った。