焦がれる吐息





終いには、百瀬くんは珍しく甘えるように私の頭にすりと頬擦りをして。


「………外ではダメって言うけど、本当は今すぐ連れ去りたいの我慢してるんだから、少しくらい牽制してもいいじゃないですか」

「けんせい…?」

「澄香さんは俺のだって。」


彼は一段と静かな声で愚痴のようにこぼした。

確かに愚痴の一つでもこぼして欲しいとたった今願っていたけれど、直ぐに叶ったそれはあまりにも熱くて、非常にこそばゆくて、胸がきゅーんと痛くて仕方がない。


「……わ、分かった…もう帰りましょう。あとはお家でいっぱい、」


このままではそのうち茹で上がる。熱い抱擁から早く脱出したい一心で、そこまで言ってはたと止まる。

……お家でいっぱいとはなんだ。自分は一体何を言おうとしてるんだ、と慌てても遅かった。


窮屈だった温もりは簡単に緩まる。

深く愛を湛えた美しい青に閉じ込められる。


「ん、ですね。お家でいっぱいしましょう」


桜唇は優雅に弧を描き、彼は嫣然と微笑んだ。

目がくらむような艶めきに睫毛はしなり震える。

思わず彼の胸元にまたきゅ、と皺を作っていた。

「………違うの、うん。今のは違くて、」

それでも今日の彼は逃がしてくれなかった。

骨ばった長い指先はそっと顎に添えられ、親指の腹ですうーっと唇を撫でられ言葉を止められた。

まるで情欲を駆り立てられるような擽ったさに、自然かつ強制的に目線は戻される。

再び、熱を孕んだ瞳と重なる。


「俺も、まだ彼氏らしいこと何一つできてないので今日はたっぷり澄香さんに尽くします」

「つくす?とは…??」

「食事は勿論、風呂も、眠る時も。」


え、と大きな声が出かけた時、添えられていた指先でくいと顎を上げられる。

再び、触れるだけのキスが落とされ“静かに”される。