焦がれる吐息




白色のカーテンから透けていた光は徐々に消え、気づいた時にはもう淡い藍色の闇に包まれていた。


のっそりベットから起き上がってスイッチに手を伸ばす。

ぴかっと部屋に満ちる白い光に目を眇めて、スマホを手にした。


【二人の生活費はスミちゃんの口座に振り込んでおいたから、ちゃんと一緒にお買い物してね♥紫月くんと仲良くするのよ♥あ〜スミちゃんに会えなくて寂しいわーん…———】


何時間も放置していたケンちゃんからの長文メッセージを途中で放棄して、ぼふっ!と、次は縦長の大きなビーズクッションに倒れ込む。

肌触りのいいワインレッド色の生地にぐりぐりと顔を埋めて、混沌とする感情を落ち着かせるようにもう何度目か分からない溜め息を吐いた。


もしかして、彼の存在含めてぜんぶ夢だったのでは、なんて。

そんな阿呆なことを思ってしまうくらいに今、家の中はしん、と静まり返っている。


空き部屋へ案内してから、彼は何処かへ出かけてしまったようだった。一度玄関のドアの音がしたきりだから、恐らくまだ帰ってきていない。

不確かなのは、彼に家のことを大雑把に説明してすぐ、避けるようにもう何時間も自分の部屋に閉じこもっているから。

物置にしていたはずの空き部屋は、知らぬ間に綺麗に片付けられ新しい寝具がしっかりと用意されていた。

抜け目ない。ケンちゃんめ、と、睨むように腕の隙間からもう一度メッセージを覗いて。


紫月、その文字に自然と目がゆく。


心の中でこっそりと、なぞるように彼の名を響かせてみた。どこか浮世離れした、繊細な雰囲気を纏う彼にとても似合う。


ミステリアスな美しい瞳、掴みどころのない妙な色気、先程からぼんやり彼を頭に浮かべてみては何度も思う。

年下だなんて、信じられない。

まさか、3つも下だとは思わなかった。