焦がれる吐息





ほんとうは、百瀬くんが私にくれた言葉のように、百瀬くんこそ肩の力を抜いてほしいし、弱音の一つでも愚痴の一つでも吐いてるところを見せてほしい。

自然にそうなれるように、恋愛偏差値小学生以下だけど、彼女らしいことはちゃんとしていきたい。

と、心の中は想いでいっぱいなのに上手に伝えられなくて難しい。

百瀬くんにとって、年上らしいスマートな恋人になりたいのに。



料理の本棚に辿り着いて、こっそり溜め息を吐いたその刹那。彼に捕まるのは直ぐだった。



「いきなり人のこと掻き乱しといて、言い逃げは流石に酷くないですか」


ふわりと背後から抱き締められる。

瞬間的に香るのは、スッと鼻を通るような爽快感溢れる匂い。

ぎゅっと抱き締められた胸元で、彼の手首に貼られた湿布が視界に入る。

最近、百瀬くんは包丁を握りすぎて腱鞘炎になったと言っていた、なんて。

驚きすぎた思考回路は現状を呑み込もうとしない。



「……偶に、澄香さんが恐ろしくなります」

「お、そろしい…?」

「俺を翻弄するのが上手すぎて、自分を見失いそうで。」



耳元、いつもよりも低くやけに艶やかな声が、鼓膜を身体を熱くする。


「彼女らしいことしてもしなくても、澄香さんはもうずっと俺の彼女なんだから何もしなくていいから。強いて言うならこの可愛さ、もう少し控えめにしてくれると有難いです」



———まじで心臓もたないから、そう零しながら百瀬くんは私の横髪にすりと鼻を埋める。