焦がれる吐息





誰のせいだと、む、と唇を窄めて瞳で非難しても、腰掛けた彼は艶やかな笑み一つで躱す。

そして、やっぱり何の躊躇いもなくキャップを脱いだ。

図書館を選んで正解だった。

殆どの人が自分の手元に夢中で、騒がしく不躾な視線がない。

私だけが見つめる静謐な中、眩い金の髪が露わになる。

前髪をわしゃと乱雑に掻き上げる、その仕草一つでさえ妙に色っぽい。

危うくほんの一瞬見惚れかけた私に、彼はふわりと目尻を柔く下げた。


「澄香さんが終わるまで大人しくしてます」


いつもよりも控えめな、落ち着いた甘い声。

微睡むような空気。
滲むように差し込む陽の光。
包み込むように流れる静かな時の流れ。


全てが穏やかなのに、私の鼓動だけが忙しなく高鳴る。



「………百瀬くんも何か本持ってきたら?ちょうど料理の本がすぐ後ろに、」

「いや、今日は澄香さんのことだけを考えるって決めてるんで大丈夫です」

「っ、?!」

「ほら、澄香さん静かに」

「(だから誰のせい…!)」


今日の百瀬くんは、なかなか休ませてくれない。

人の心臓に矢ばかり射ってくる。