何の躊躇もなく帽子を脱ごうとする百瀬くんをどうにか制し、一先ず直ぐ側の図書館へと逃げ込んだ。
謎の帽子譲り合い合戦で、更に注目を浴びてしまったからだ。
揃ってあんぐりと口を開けて唖然としている多くの外野の中に、ゼミの仲間がいたような気もするけれどちゃんと目視する余裕もなかった。
「……百瀬くん、こっち」
静寂と本の香りが広がる館内の中央、大人しく着いてきてくれた百瀬くんへと振り向けば、彼は3階の天まで吹き抜ける空間を珍しそうに見上げていた。
ゆったりと瞬く色素の薄い睫毛に、光の粒がきらきらと纏う。
満ち溢れる清らかな白い光を眺めるその横顔は当たり前に綺麗で神秘的で、久しぶりに会えている実感と彼がこの場にいる不思議さとが相まって、どうしてか胸底がじーんと熱くなる。
ここまで握り締めてきていた彼の指先にもう一度ぎゅと力を込めて、早足で人気のない方へと導いた。
「……少し卒論進めてからでいいですか」
誰もいない一番奥の窓際、陽がさんさんと降り注ぐ席に座る。
本音を言ってしまえば今すぐにでも初デートのお誘いにのりたいところだけれど、一旦外が落ち着いてからのほうがいい。
自分の容姿に無自覚な百瀬くんには適当な理由をつければ、彼は向かいの席の椅子を引きながら軽やかに糖分を転がしてくる。
「じゃあ、まずは図書館デートですね」
「!」
「し。静かに」
動揺して飛び跳ねた弾みで椅子を鳴らしてしまえば、透さず形のいい唇には人差し指が立てられた。



