焦がれる吐息





「……もしかして何か連絡してくれました?すみません、いま携帯充電切れてて、」


危うく気持ち悪い表情になりそうだから、ふに、と頬を引き締めて。勤めて冷静を装い、残り5歩を毅然と歩み寄る。

きっと何か連絡をくれていたのだろう、彼の片手で固く握り締められているスマホに気がついて、胸がまた違う意味でキュンと切ない悲鳴をあげる。

私がこのまま来なかったらどうしていたのだろうか。

百瀬くんならいつまでもずっと待っていてくれそうで、途端に頭に忠犬ハチ公が浮かんでしまう。

申し訳なさで眉尻が下がり、辿り着いた彼を見上げる。


「いや、俺も急にすみません。ただ、急遽休みが取れたので」




百瀬くんもまた申し訳なさそうにしながらも、でも、私を愛おしそうに見つめ、はにかみ。



「澄香さんとデートしたいなって」



遠慮なく、装う冷静を剥ぎ取ろうとしてくる。

ここは大学で、公共の場なのに。

誰が見てるかも分からないし、私、一応年上なのに。

そう意識はちゃんとある。

なのに、たった一言だけでぶわっと頬が熱くなって馬鹿みたいに心が踊り始めるから、前髪を掻き上げる振りをして俯き頭を抱え、こっそり一度深呼吸をした。


「………でた、そういうとこだよ、(何度も好きになっちゃうの)」

「そういうとこ…?」

「なんでもない。てか、目立ちすぎだよ百瀬くん」

「それを言うなら澄香さんですけど。帽子は?」

「え?今日はないけど」

「じゃあ、俺の、」

「いいいいいらない、いらない。やめて、取らないでお願い」