焦がれる吐息




冬のはじまりのような、冷たい香りをツンと鼻先で感じながら。たった今見下ろしていたプロムナードを急足で抜けて、漸く正門が見えてきた頃。

頭の中のまさかは、すぐに現実となった。

その瞬間、すかさず不意打ちのときめきが胸をずきゅんと射る。

正門の隅、門柱に寄りかかり立っているその姿は勝手に騒がれていた噂話の通り。


もう何度か経験しているはずなのに私はこうして彼を見つけるたびに、彼が私の瞳に触れるたびに、毎瞬、初めて恋に堕ちたように胸が痛くなる。

そして、それ以上に、


「澄香さん」


彼と瞳が重なるとき、澄んだ青い瞳に映してもらえた時、どっと喜びが押し寄せる。

あと、5歩程の距離だった。

ふと顔をあげ真っ先に私を瞳に映した百瀬くんは、私に会えたうれしさを当たり前のように溢してくれる。


「良かった、会えた」


つい零れた独り言のような、小さな呟きが擽ったい。

正直、かわいかった。

百瀬くんはキャップの鍔から嬉しそうに細まる瞳を覗かせ、花が綻ぶようにちいさく笑う。

だから、枯れていた心が、急速に潤う。

有り余る時間なんて要らないから、少しでも百瀬くんに会いたかったんだって、簡単に答えへと導いてくれる。

木枯らしに晒されていた頬は熱を取り戻すし、むっとひん曲げてばかりいた唇がだらし無く緩んでしまいそうになる。

約4年間、ただの背景にしかすぎなかったプロムナードだって煌めいて見えてしまう。