焦がれる吐息





「てかてか、最近SNSで急上昇に上がってた謎の美男美女カップルってスミ先輩達のことですよね?ほら、もうどの記事も閲覧できなくなってるけどお〜」

「え〜何の事かしら〜?」


スマホ片手にむりやり話を方向転換してきた尾崎ちゃんに、口笛を吹く真似をして苦し紛れに誤魔化す。

あれ程までに熱い告白シーンを公共の場で晒し魅せつけておきながら、当の本人達は我関せず。しかし後処理がどれほど大変だったか少しは分かって欲しい。

彼と仕立てた撮影会では情報漏洩は固く禁じていたのにも関わらず、居合わせた一般人に隠し撮りされ、二人の写真が流失してしまったのだ。

その拡散力は想定外、謎の超絶美男美女カップル爆誕と#タグ付きでSNS界を瞬く間にどよめかせてしまった。

美女を愛おしむように見つめ真摯に告白する美青年、涙を堪えながら美青年を見上げる美女、美女に頬を添えられる美青年、抱き締め合う美男美女、美青年に手を引かれ連れ去られていく美女。


一体何者だとコメント欄で騒がれ、事務所は問い合わせの嵐。美、美、美、兎にも角にも美が溢れた数枚のツーショットは、素人が撮影したのかと疑うほどにどれもが映画撮影のワンシーンのようだった。


写る全てが横顔だったのがせめてもの救いだ。

いや、でも、横顔も完璧だからな〜スミたんは…なんて親バカのように視線を戻せば、彼女は小さな王子様の頭を嬉しそうに撫でている。



「まったくう〜人の気も知らないで〜」


「本当ですよね」



その時、穏やかな風のように流れてきた同調。

耳心地良く婀娜めいたその声にぽかんと間抜け面で見上げれば、もうその声主は既に真横を通り過ぎるところだった。


「ごめん、ケイト」

金色の柔らかな髪を靡かせ、薄い桜唇は優しげに弧を描く。


「“スミちゃん”は、俺の彼女なんだ」

期待を裏切らないその横顔はやはり美しく、彼自身が鮮烈な煌めきを纏っているように眩しい。


「(やっと本物の王子様のお出ましね)」