焦がれる吐息




「はいは〜い、みんなお疲れさまあ〜」


突として。

微睡むように静まる世界を叩き起こしたのは、パンパンと高らかに鳴る拍手と呑気な声だった。


彼の胸の中から顔をあげれば、群衆の向こう側に現れたのは、スーツ姿、金髪オールバックで細い眉を尖らせた相も変わらず強面の男。

ヒーロー兼この事務所のトップが空気を掻っ攫うように登場し、騒がしさは一気に取り戻される。



ケンちゃんは唖然とする宍戸さんの前に立ち、一枚の紙を掲げる。そして、ニッと口角を上げると真っ二つにそれを破って見せたのだ。



「百瀬紫月とは契約破棄。宍戸、もう分かってると思うけどアンタの完敗よ」

「社長…」

「愛ってね、相手に押し付けた時点でもうそれは愛じゃなくなるの。アンタが出直してきなさい」



ぴしゃりと言い切るケンちゃんの横顔が何時になく逞しい。出番を待っていましたと言わんばかりの生き生きとしたその姿に、悔しくもほんの少し鼻の奥がツンと熱くなり眉を下げる。

この舞台はケンちゃんが用意したもの?
もしかして、百瀬くんも一緒に?