焦がれる吐息





それは、数ヶ月前のこと。


深夜にきていた一件の不在着信と、『スミちゃんどうしよう聞いて!』からはじまるメッセージ。


『やばい原石を見つけたの!』
『我が社の革命よ!!!』
『やーん、美しすぎてまだ震えてるう〜』
『とりあえず連絡先ゲットしたのよーん!!』







数十件、とにかく興奮しているのが伝わるそれらを見たのは朝方で。

すやすやの眠りから目覚めた私は「(なんの報告?)」と、スマホ片手にふわあっと欠伸を漏らしながら『よかったね』とだけ返した。

私は事務所の社員でもないし、ケンちゃんのお仕事事情にも、芸能界にも興味がない。

トップのケンちゃんが直々に誰かをスカウトしたというのは聞いたことがなかったから、へえー珍しい、くらいの感想だった。



「アタックアタックアタックして!最近ね、漸く口説き落とせたの!」

「そう、よかったね」

「そうなんだけどね、今すぐデビューさせたいくらいなのよ?まずはモデル、いずれ俳優とかね?売れる自信しかないんだけど……」

「うん?すれば?」


結構重い悩みなのかなって思ってたけれど、なんだ仕事の話かと吸い損ねた煙草を咥える。


「一つ、大きな問題があるのよ」

「………なに」


ケンちゃんの難しい顔から視線をはずしライターの火を灯したところ、まさにデジャヴ。


ダンッ!とまた、大きくテーブルが揺れた。


「彼、頭抱えたくなるほど女が苦手なの」


だから、と続けるケンちゃんを見上げる。

ぶつかるのは、懇願するような真っ直ぐな瞳。


ケンちゃんはもう一度姿勢を正し、真剣に、慎重に、ゆっくり言葉を紡いだ。