焦がれる吐息





コツ、コツ、コツ、と、革靴の音を丁寧に響かせながら大勢の前に現れたその姿。

黒のダークスーツを纏い、すらりと長い手足、確かに一般人とは次元の違うスタイルを際立たせ。

最後に見た時には目に掛かりそうだった金髪を後ろへ梳き上げて、額、美しい顔を惜しげもなく露わにする。


澄んだ青の瞳は、はっきりと世界を捉える。


それは本当の最後尾、一歩、また一歩、地に足をつける度に苛烈な色香を溢している百瀬くんは、多くの女性の熱視線を浴びていた。

けれど、彼はいつものように下を向くことはなかった。

凛々しい瞳は宍戸さんへと真っ直ぐに、そのまま一瞬たりとも視線を外すことなくその元へと向かう。

宍戸さんは訝しげに眉を顰め、明らかに動揺しているのが分かった。

それでも、百瀬くんは端麗な顔を崩さず読めない顔をして宍戸さんの真正面へと立った。


対面する二人。

戸惑ったように二人の顔を交互に見る菊乃先生、ヒソヒソと騒つき始めるスタッフ、誰もが見て分かる緊迫感が走り、宍戸さんが先に口を開く。


「おい、打ち合わせと違う、」


その時一瞬、美しい桜唇の端が、微かに上がったように見えた。


ふわり、金の髪が流麗に動く。


百瀬くんは、多くの視線の先で深く頭を下げた。