焦がれる吐息





最後のケンちゃんの言葉通りであれば、カフェスペース…つまり百瀬くんはあの群衆の向こう側で撮影に参加するの……?


「あれ、澄香さん?今日ってジム使われる日でしたっけ?」


人集りに近づくその途中、勢いづいていた足が止められる。

振り向けば、見知った受付の女性が首を傾げていた。手元のタブレットを確認し始める姿に、途端に居心地が悪くなる。


「いや…」

「社長とお約束ですか?それなら、」

「いえ、そういうわけでも…それより何でこんなに人が…?」

「あー今日は雑誌の公開撮影なんです」

「公開撮影…?」

「写真家菊乃先生とのコラボ企画で。デビュー前の超大型新人が異例の大抜擢で、お披露目も兼ねて副社長が一般の方も観覧できるようにしたんですよ」

「……大型、新人…」

「あ、もしかして澄香さんも社長から聞いてますか?私も一度だけ見掛けたんですけど、あの男の子は次元が違いますよ。間違いなく売れますね」



———百瀬紫月くんって言うんですけど、

そう、興奮気味につらつらと情報を与えてくれる女性に笑みを返そうとして、でもうまく口角が上がらなかった。