焦がれる吐息






𓂃𓈒𓏸

「———切れちゃった」


途中で見事に通話が切られてしまったスマホを手に、「まあ、いっか」と満足に顔を綻ばせる。




『———契約を白紙に戻していただけませんか』

『あらどうして?スミちゃんに見合う男になる為にアタシの話に乗ったんじゃないの?まさか、宍戸にビビっちゃったのかしら?』

『……いえ、副社長のおかげで漸く目が覚めたんです。やっぱり俺は———』



狡猾さを秘めていた欲望を隠すこともなく、粛々と微笑む。

思い浮かべたのは、施設の縁側で肩を並べて話していた時のこと。その神々しい横顔に、思わず息を呑んでしまった事も悔しいから秘密だ。

深い愛を紡ぐ彼の瞳は、まるで眩しい光を見るかのように輝き、どこまでも澄明だった。

纏う独特な色気でさえも、出会った当初よりさらに拍車が掛かっていたのだ。

職業病か、その一時、写真一枚でも相当な価値があったと心残りはあるけれど。



「……あの子がいないと輝けないのならば仕方がないわね」


はあ、と腹の底から溜め息を吐いて下心を有耶無耶にする。そしてデスクの一番下、大切に閉まっていた一枚の紙を手にした。


「お姫様をお出迎えしなくちゃ」



愛が積もった、幸せな未来はもうすぐそこに———