焦がれる吐息







『アタシの為にずっと通っててくれたんだって?……ふふ、貰った絵もね、額縁に入れて飾っちゃった…」

「……そう」

『ケイトくんなんかね?抱っこって何度も抱きついてくれて。この世界に、こんなにも幸せな温もりがあるんだな〜って……』

「……良かったじゃん」



照れながらも本当に嬉しそうに話すケンちゃんに、思わず唇が小さく綻んだ。

どうやら異様にテンションが高かった謎は、本題に入る前の照れ隠しだったようだ。見かけによらず、この人は恥ずかしがり屋で乙女で、母性に溢れている人だ。


そう、ほんと、“見た目に似合わず”。




『……でも、どうしてこんな事を?アタシが子供達に好かれるようにしてくれたんでしょう…?』


不意に投げかけられた問いに、覆っていた腕をゆっくりと下ろして、見えない星空を仰ぐ。


金色の短髪ツーブロ、態々、小麦色に焼いた肌。誰が見ても強面で男らしいケンちゃんの今の姿を浮かべて。胸の中にしまってあるその格好の理由をなぞってしまえば、心の傷はいつだってズキズキと疼く。



「……今のケンちゃんでいてくれるのは、私のせいだから」




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「ケンちゃんも、もっとちゃんと“らしい”格好すれば?」

「あーアタシは、いいのいいの!」

「何で?スカート履いてみたいって言ってたじゃん」

「だって、男の格好してスミちゃんの隣に並んだ方が何かと都合が良いじゃない?ほら、この前も彼氏と思われたでしょ!アタシは良い魔除けよ〜ん」



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過去に一度、女性誌を羨ましそうに眺めていた姿に問いかけたことがあった。

けれど、返ってきたのはニカッと花が咲くような笑顔と、ふふん、と誇らしげに胸を張ってくれた眩しい姿。

今の時代、お金を積めば幾らでも“心”に近づけるのに。

ケンちゃんは男嫌いの私を守る為に自分を犠牲にしてくれていた。