焦がれる吐息






「(………ほら、考えない…もう考えない。)」



きっと数分に一度は繰り返している唱えを懲りずに頭の中で呟きながら、ごろんと寝返りを打つ。

そうすると嫌でも目に入るのは、鬱陶しいほどに穏やかな光が差し込む窓際。

虚ろな視線の先で、一輪のガーベラが哀しそうに下を向いている。 

毎日水を換えているのに、まるで二人の関係を提示しているようにそれは萎れていく一方だった。


「(……捨てて行ってよ…)」


ケンちゃんの言っていた通り、花瓶は私があげた水色のワインボトルになっていた。ちゃんとした一輪挿しに飾ったのに、態々、一緒に飲み切ったボトルに変わっていたのだ。

 
……何を考えて、何を思って飾ってくれたんだろう。

なんてほら、また考えてる。考えるのをやめてしまえば楽なのに、考えることをやめられない。

繋いだ手の温もりとか、そっと抱き寄せてくれた力加減とか、香りも、声も。

時間が経つにつれてちゃんと記憶は薄れていってくれるのに、不本意にもそれが無性に切なくて、気を抜けば直ぐにでも何処でも泣きそうになってしまう。


恋を失うと書いて失恋と書くけれど、それなら、心ごと失ってしまえればいいのに。

いっそのこと、感情丸ごと失ってしまえば、この胸が痛くて痛くてたまらない辛さから解放されるのに。