焦がれる吐息





「しーちゃん!!」


男の子が声を張り上げたのと一緒に振り向けば、そこには確かに自分がスカウトした美しい青年がいた。

コックコートを身に纏ったその姿は出逢った頃と同じ洗練されたスタイル。けれど。



「お久しぶりです」


丁寧にお辞儀をしてから目を合わせる彼は、当初の印象と全く異なる。

纒う雰囲気、表情、何より瞳の色が。



「社長に話したい事があります」



朝光を浴びるのは、揺るぎのない、凛々しい青。

怯んでしまいそうなほどに美しい瞳。

何かが吹っ切れたように清々しいその瞳を真っ直ぐにぶつけてくる紫月くんに、思わず力の抜けた笑みが漏れてしまった。



「(……なーんだ…)」


“じゃあ、アタシが外の世界へ連れ出すわ”


いつかの闇夜の下、張り切って肩を回していたけれど。

美しき原石、磨いたらどんな輝きを見せてくれるのだろうと楽しみにしていたけれど。


「(……随分前から、スミちゃんが磨いてくれてたのね)」


ふうーっと、気を取りなおすように息を吐きながら目尻の湿り気を拭う。そして、ぽんぽんと男の子の頭を撫でてから立ち上がる。


「……アタシも話があったからちょうど良かったわ。でもその前に一つ、確認するけど」



挑むように態とらしく口角をあげ、彼の元へと一歩前へ出る。宝物となった絵の端を握る指に無意識に力が入る。



「今の言葉、本気?スミちゃんが好きって」