焦がれる吐息




「(あれ、この子は……)」


小学生くらいの少年は目の前で立ち止まり、やはり眉間を寄せたまま強い眼差しで見上げてくる。

その見覚えのある顔に、自身の大きな身体が情けなくも萎縮する。

たしか初めて施設を訪れたとき、

『二度と来るな、偽善者!』

そう、敵意剥き出しに睨んできた子だった。


「あーっと“オジサン”すぐに退散するからね、ごめんねえ〜」


自分のせいで穏やかな施設の空気を乱したくない。

冷や汗を感じながら目を逸らそうとすれば、少年はムッとむくれていた口をごにょごにょと動かし始めた。


「……ゴリラがこれからくるって先生が教えてくれたから、その…お前のことまってた」

「へ…?」

「これ、スミちゃんと一緒にみんなで書いたやつ」


驚く暇もなく。少年は真っ赤に頬を染めながらそう言って、背中に隠れていた右手を「ん」と差し出す。

その手には大きな画用紙、そこに大きく書かれた文字を、カラフルに描かれた絵を見つめて息を呑む。