焦がれる吐息





…ささっ…さささっ……!


まさに忍びの如く。

腰を落とし、一つも音を立てずにつま先のみで小走りをする。

鮮やかなバーミリオンのエルメススカーフを頭から被り、サングラスで変装もバッチリ。


「(子供達に見つかる前に急いで…!)」



久しぶりに訪れた“こどもの家 スミカ”は、朝の光を浴びながらも聞こえてくるのは小鳥の囀りのみ。

まだ寝静まっているようだ。

子供達を怖がらせたくないから、本当は明るい時間帯に来ることに気が引けた。

けれど、スミちゃんの為だから仕方ない。

スミちゃんばかり考えていた為に剃り忘れていた髭もジョリジョリだけど、それもまあ仕方ないの。


「(クソ眼鏡を成敗する前に一刻も早く王子様と話さなくちゃ!)」


…ささっ!さささっと施設の廊下を素早く移動して、子供たちの朝食を作っているらしい彼(施設長に確認済み)がいる調理場を目指していたとき。


角を曲がってすぐに、どんっと足元に何かがぶつかった。

慌ててサングラスを外して見下ろせば、寝起きらしいパジャマを着た小さな男の子。

片手にはクマのぬいぐるみ、目を擦りながらアタシを見上げるトゥルンとした大きな黒目と見つめ合いながら青褪める。


「(やーん、まずい〜!!)」


また泣かれてしまう、怖がらせてしまう。

反射的に一歩後退りして隠れようとした……のに、ここで予想外の事が起きた。