焦がれる吐息





今すぐにでも狡賢いクソ眼鏡のところに……と言いたいところだけれど、その前に。



「ねえ、スミちゃん?いつからここに居るの?」



再びシーツに覆われてしまった彼女の頭を丁寧に撫でた。

愛おしさをのせた手のひらを動かしながらも、頭に浮かぶ景色につい口元が綻ぶ。


「さっきね、スミちゃんの家にいったら冷蔵庫に美味しそうなおかずの作り置きがみっちり入ってたわよ。丁寧にタッパに詰められて、ちゃんと日付のラベルも貼ってあった」

「……」

「それと、紫月くんの部屋の窓際にお花が飾ってあったの。ワインボトルにガーベラが一本挿してあった。お水を変えたばかりのようだったから、アタシとすれ違いで出て行ったのね」

「……」


当たり前のように返ってくるのは無言。でも殻が微かに震えている。

静かな部屋に、スン、と鼻を啜るような音がやけに切なく響いた。


冷蔵庫の中、大切に飾られていた一輪の花、ドレッサーの下に落ちていた『冷蔵庫に入ってるサンドイッチ、良かったら朝食に…』なんて綺麗な字で書かれた彼から彼女へ宛てたメモ用紙。


自分がいない間、二人がどんな風に過ごしていたのかは分からないし、聞いてもきっと教えてもらえないだろう。でも、二人が過ごしていた一室には確かな温もりが残っていたのだ。