焦がれる吐息





言葉も忘れてかわいい山を眺めていれば、そのシーツがそろそろと下げられる。

スミちゃんはひょっこり顔半分だけを覗かせて「……聞いてる?」と眉を顰めた。

一ヶ月ぶりにご対面できたその顔に漸く歓喜できると思いきや、自分の血の気が引いていくのが分かる。


「(ス、スミちゃんの、おめめがっ…!)」


いつも涼やかな下三白眼は、真っ赤に潤み。

綺麗な二重幅は泣き腫らしたようにとろんと重そう。

あわあわと自身の唇を震わせていれば、スミちゃんはシーツで口元を隠しながら珍しく眉を垂らした。


「……百瀬くんは規約違反してないから、……その…罰とかしないであげてね」

「へ?き、規約違反?」

「事務所の社員とその身内とは……恋愛…禁止ってやつ」

「……え、それ宍戸が言ったの?」



思わず低くなった自分の声。飛び出そうな目ん玉の先で、スミちゃんは何かの感情を堪えるようになんとも可愛らしくむぎゅうと眉間をしぼる。

そして彼女の美しい瞳がうるうると潤みはじめて間もなく。スミちゃんはガバッ!とまたシーツを被って隠れてしまった。


「ん。でも、私たちそういう関係じゃないから」


「スミちゃ、」


「百瀬くんのことよろしくね、ケンちゃん」



殻の中から静かに紡ぐ彼女は、切なげに懇願しているようだった。

身体を丸めたのか、もぞもぞとさらに小さくなったシーツの山を見つめながら「ふーん、ほーん、なるほどなるほど」と何となく分かってきた現状を脳内整理する。

その腹の内からは、ごおおおおっとマグマが湧き上がってくるのが分かった。