焦がれる吐息





信号が青になった。

それでも足は動かなかった。

動かせなかった。

彼を瞳に、好きだと心が叫んでしまっていたから。

きっとこのまま澄んだ青の瞳に映ってしまったら、艶やかな甘い声を聞いてしまったら、私は我慢できない。

彼の未来よりも、自分の欲を優先させてしまう。

たったの数時間では、まだ彼を諦める覚悟が全然できていない。

もうすぐそこにいるのに、彼を見つめて、もどかしい手を握り締め立ち尽くした。

尾崎の家に戻ろうか、コンビニとか、漫喫とか、そう、脳内でひとりじたばた足掻いていたとき。

不意に彼の顔があがる。

仄暗く虚ろな青の瞳と重なった。

瞬間、彼が駆け出した。

一心不乱に走り寄ってくるその姿に心臓がぎゅうっと鷲掴みにされて、その痛みに口角が下がる。

チカチカと青信号が点滅する横断歩道に、黒色のキャップが落ちる。

でもそんなのお構いなしに、露わになった金の髪は朝日を浴びながら、きらきら、ふわふわ靡いて。


「———会いたかったっ…」


立ちすくむ私を思い切り抱き締めた百瀬くんは、震える声を絞り出した。