焦がれる吐息






「すみません、さっきの嘘です」



声ってこんなに重かっただろうか。



「好きな人なんて、いないです」



嘘ってこんなにも痛かっただろうか。


「百瀬くんとは別に何もないです」


尾崎に照れ隠しで答えた時と同じ言葉なのに、喉に灼熱の槍が刺さったように痛くて泣きたくて仕方がなかった。

でも、もう自分のせいで大切な人の未来を奪うことのほうが怖かった。


目の前の男の反応を確認する前にくるりと背を向け、すん、と鼻を啜る。


直ぐにでも正したくなる震える唇を急いで動かして「尾崎、行こう」と言いながらヒールの音を鳴らした。


店の出口まで数メール進んで、


でも思い出したように足を止める。


「最後に一つだけ」


虚しい手ぶらの拳を握り締めて、背中越しに吐き捨てた。



「アンタみたいな自分の立場利用する男、死ぬほど大っ嫌い」



息を呑むような音を後ろに、遠慮なく再び足を動かす。

悔しさとか、歯痒さとか、今まで何も考えないでただ浮かれていた自分への恥ずかしさとか、ごちゃごちゃの感情を抱えて半地下から続く地上を見上げた。


白々とした光が眩しすぎて、余計に鼻の奥がツンとした気がした。