「事務所社員及びその身内とは恋愛を禁ずる」
「百瀬紫月は、もう契約書にサインしています」
「うちとしましても、百瀬紫月のような人材を簡単に手放したくない。それに奴は前職も解雇されている。加えて我が社のようなどの企業とも太くパイプがある会社で問題を起こしてクビになったと経歴が残れば、彼はこれからどうなるか…起因が、社長の溺愛している貴女となれば尚更。」
宍戸さんはわざとらしく困ったように眉を下げ、一人つらつらと口を動かしていく。
言い聞かせるように並べられていく言葉が、痛かった。
「質問を変えますね。百瀬紫月と澄香さんの繋がりはただの社長命令、ただの治療。そこに私的な感情は一切含まれない。」
「百瀬紫月に対して恋愛感情はない。ですよね、澄香さん?」
頷いてくれ、と強く懇願するような宍戸さんの瞳がただ痛かった。
『……だって、否定したくない気持ちだから』
自分の言葉が自分の首をぎりぎり締め付ける。
息がくるしい。
唇が震えて、目の前がじわりと滲む。
言葉を呑み込むのは得意だったはずなのに。
「澄香さんも未来ある若者の将来を不自由にさせたくないですよね?」



