焦がれる吐息





私の言葉に、宍戸さんの顔が忽ち青褪めていくのが分かった。

はくはくと、口をちいさく開けては閉じたりを繰り返し言葉を見失っている。

気まずい空気が流れるか、と思いきや。

後ろからカツカツカツ!とヒールの音が勢い良く走り寄ってきた。


「ちょっとおっさん!まさかわたしの美女様にナンパ?!やめてよね、そこらへんにいる女と違って軽々しく声掛けていい人じゃないんだから!」

「尾崎、」

「それにね、先輩にはもう金髪超絶美青年の彼氏様がいるんだから潔く諦めな!!」

「ちょっと…!」


ショッピングバック片手に戻ってきた尾崎は、宍戸さんに掴みかかりそうな勢いで啖呵を切るから慌ててその腕を引っ張る。

でも、まずいかも、と思った時にはもう遅かった。



「カ、レシ……金髪、美青年…?」



突として空気が、ぴん、と張り詰める。



「…モモセ……まさか…百瀬、紫月?」



低く掠れた声で、だいすきな名前が紡がれる。

そして、


「澄香さん、まさか百瀬紫月と関わりがあるなんて仰りませんよね?」


宍戸さんは薄い唇の端を無理矢理のようにあげて、引き攣った笑みをうかべた。

異様な空気に下手に返せなくて、ただ唇を引き結ぶ。

嫌な胸騒ぎが強い緊迫に変わり無意識にエプロンを胸元でぎゅうと抱き締める。

すると、静まり返った場に「はっ」と乾いた鼻笑いが響いた。


「……あのクソガキだったのか」


たった今目の前で純な熱を孕んでいた瞳は一瞬にして細く窄み、鋭く冷たい焔が点じられる。