焦がれる吐息





私も、もっと前から料理してれば良かった。

葱すらまともに切れない女より、尾崎のように軽くできるって言える女の子の方が絶対いい。

どうしよう。今朝はドキドキばかりして気にしていなかったけれど、百瀬くん、本当は呆れてるかもしれない……。

「スミ先輩は料理嫌いなんでしたっけ〜?」

「……嫌いではないけど…」

「ん?なんか急にテンション下がってる?あ、ほらほら!これなんて先輩に似合いそう!!」

そう言って素早く黒色のエプロンを充てがわれる。

「んきゃ〜萌える〜!これやっぱり先輩にぴったりですよ、ほら!ね?!」

そして、何処ぞのアパレル店員さん以上に目をギラつかせる尾崎にそばの鏡の前に立たされた。

対面するのは、やっぱり眉が八の字に下がった私。

尾崎が勧めてくるブラックベースのそれは、シックなVラインの胸元、流れるようなAラインシルエットでドレス風のエプロンだった。

太めの腰紐だけ白色で、前結びにウエストでつくられた大きなリボンが黒に映えてかわいい。

確かに、このエプロンは凄くかわいいけど…


「いや、私には…」

「まずは形からって言うじゃないですか?それに男の前で着たらもうイチコロですよ!どんなにイケメンさんでもウッハウハですよ!」

「…いちころ…うはうは…」


百瀬くんの前でこのエプロンを……想像してみて、鏡に映る自身の頬がほんのり色づいていく。

その後ろで、ニタニタと頬を緩める尾崎が悪魔の囁きのように耳元でひそっと吹き込んでくる。


「ふふ、エプロンって男のロマンがつまってますからね」

「男のロマン…?」

「裸エプロンなんてしちゃったりして、ぐふふふ」

「…はだ…??!」