焦がれる吐息





「いっらしゃいませ〜」

「きゃ〜かわいい〜!」


半地下へと続く短い階段を降りてカントリー調のドアを開ければ、広がるのは外から見た通り温かみあふれる空間。北欧のアパートメントにお邪魔したような気分になる洒落た店だった。

私たちが覗いた窓からは白々とした陽の光が差し込み、半地下から見た地上は想像以上に明るい。

はしゃぎながら奥へと進むその後ろをのんびりついていきながら、きょろきょろと目を輝かせた。

整然と並ぶ食器や小物はどれも好みのデザインで。

可愛いなって目を留めては、

「(百瀬くんだったらこの色かな……)」

つい、彼と使う様子を妄想してしまう。

そんな自分が一々むず痒くて、でも百瀬くんの事を考えながら物色していくのがなんだか楽しい。

きっといま私の胸の中を覗いたら、浮かれた煌めきで満ちている。


「スミ先輩見て見て!これちょー可愛くないですか?」


華奢なカトラリーを見ていれば、穏やかな空気に一段とテンションが高い声が響く。

尾崎はアプリコット色のエプロンを身体に当てて気取ったポーズを取っていた。


「…尾崎って料理するの?」


ふりふりとした袖口のエプロンはまさに尾崎らしいけれど、失礼ながら料理しているイメージが湧かない。

歩み寄りながら静かに問い掛ければ、彼女はこてんと首を傾げて愛らしく笑む。


「普通にしますよ?」

「…へえ……葱とか切れたりするの?細く…」

「細く?輪切りにですか?できますよ〜ん」

「…ふうん。尾崎の方こそ良いギャップじゃん」

「へへへ、料理はモテポイントですからね!」


照れたように笑う彼女はやっぱり可愛くて羨ましくて、自分の眉が八の字に下がったような気がした。