焦がれる吐息





「ちょっと先輩!笑ってる場合じゃないですよ!いいですか、この尾崎が先輩に恋愛というものを教えてあげます!!」

「え、別にいい、」

「あのですね?まず両片想いというのは、本当は両思いなのにお互いに片想いだと勘違いしてなかなか進展しない関係を言います!」

「……」



———本当は両想い…なかなか進展しない…自分の頭にはなかったワードに未熟な脳みそは熱を持ち、心臓は変な脈を打つ。


“そのうち、ちゃんと伝えます、澄香さんに”

“だから俺のこと好きになって、待ってて”


尾崎の言葉を蹴散らすように鮮やかに蘇るのは、どんなにお酒を飲んでも絶対に忘れない、忘れたくない言葉。

私と百瀬くんの間にあるものは、尾崎の言う両片想いとはちょっと違う気がした。

ケンちゃんが帰国するまでの日数は残り僅か、もう両手で数えられてしまう。

その両手が閉じられた時、私と百瀬くんの関係はどうなるんだろう。

彼の言う通り待っていたら、進展、するのだろうか。

……してほしい。けれど今の穏やかな関係がその先で壊れてしまったらと、怖い気持ちもほんの少しあった。


ただ、百瀬くんのそばに居たいという想いは胸のど真ん中に強かに咲いている。



「……ほら、本当に行こう」



面映ゆい気持ちを流し込むように最後に含んだキャラメル味は甘ったるくて。


やっぱり彼が与えてくれる、しとやかな糖度の方が好きだった。