焦がれる吐息





「えーん!まだ何も話してないじゃないですか!そろそろ彼氏さんの話聞かせてくれても良くないですか?!」

「……彼氏って、だから私いない、」

「またまた〜ほらまだ飲み終わってないですし!座って座って!」


ぐい、と前のめりになった尾崎に腕を引っ張られて強制的に元に戻される。

確かに飲み終わってないけど……。

禁煙しているせいか何となく甘いものがいいかなと挑戦してみたキャラメルマキアートに、渋々また口をつける。

結果、胸の中に詰め込まれた彼の糖分だけでもう十分でさっきからなかなか進まない。

禁煙は百瀬くんだけで成り立つことが分かって、無駄にこそばゆい気持ちが膨らむばかりだった。


「で、金髪超絶美青年とはどんな感じなんですか?」

「どんな感じって、別に何もないけど」

「何もないって、でもスミ先輩はあのイケメンさんが好きなんですよね?」


当たり前のように首を傾げる尾崎から、すぐに視線を落とす。

無意味にストローをくるくるしながら、もうずっと心に居座る彼を内で大切に見つめる。

そうすれば、いつも無愛想な唇は自然と動いて。


「……うん…すき、かな」


秘めている二文字がちいさく零れた。その響きは思いのほか照れ臭くて、でも本当はずっと声にしてみたかった言葉だった。

口にしたら余計に彼が恋しくなって、耳朶がじんと熱くなるからそわそわと横髪を耳にかけた。


すると途端に騒がしかった声は消えて、優雅なクラシック音楽がよく聴こえるようになる。

伏せていた睫毛をあげれば、飛び出そうなほどに瞠目した尾崎がいた。


「どしたの?」

「……」

「尾崎?」

「え、いや、まさか、こうもすんなり肯定してくれるとは思わなくて、」


面白いほどに驚く尾崎に、小さくはにかむ。



「……だって、否定したくない気持ちだから」