原因はだれ、なんて一人しかいない。
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『わ、太くなっちゃった…すみません…』
まな板に並ぶのは、お味噌汁と納豆に入れる葱。
頭の中で描いていたのはもっと細切りだったのに、目の前にあるのは焼き鳥の串に刺さっている以上に極太だった。しかも、どうしてかみんな繋がってる……。
しゅん、と落ちた肩には、直ぐにやさしい力が添えられた。
『大丈夫、もっと力抜いてください』
故意的なのかと思うほどに、耳元のすぐそばで囁かれた艶気を含んだ声。
ドキドキして、変に意識して。
逆に身が硬くなってしまえば、背後から長い腕がまわってくる。柔い香りがぐっと迫り、不慣れな手は骨張った大きな手のひらに優しく包み込まれる。
『ほら、指危ない』
『、ちかい…』
『澄香さんすぐ余所見するから。ちゃんと手元見てて』
『一緒に持つ包丁はゆっくり丁寧に動いて、不格好なネギが少しずつ綺麗になっていく。けれど、どんな包丁の使い方だったか、まったく覚えられなかった:
『ん、上手』
目尻にやさしい皺をつくり、ふわりと花が綻ぶように微笑む表情。私を大切そうに見つめる瞳は、ずっと生き生きと煌めいていて。
厳しいのか甘いのか分からない指導で、事あるごとに密着してくる。
はじての料理の先生は心臓に悪くて、たぶん、一生上達できない気がした。
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「ほーらっ!またスミ先輩ぽけっとしてる!」
「ごめん…」
「ぐっ…素直かわいい…」
突然鼻を押さえはじめた尾崎に、いよいよ隣に座っている女性から訝しげな視線を感じるから「もう行こう」とそそくさと立ち上がる。
このままでは尾崎の話になんて集中できない、それに、何より…———
『行っちゃうんですか』
『、後輩がしつこいので……』
『じゃあ迎えに行きます。今度は絶対ちゃんと待っててください』
『え、でも真昼間だから、』
『はいしか受け付けてません』
『、……はい』
『早く会いたいって思ってる事、忘れないでくださいね。……いってらっしゃい』
珍しく、きゅ、と微かに眉を寄せ、不満そうに口角を下げて見送ってくれた顔がずっと心を占領してくる。口には絶対に絶対に出せないけれど、なんだか可愛かったしうれしかった…し、私もはやく百瀬くんに会いたい……。



